2016/10/8

そうやったんや! 畑山博史のわかるニュース
大阪で55年ぶり 万博って何?

湾岸の人工島、持て余しの末

 「大阪に2025年開催の国際博覧会(俗にいう万博)を誘致しよう」と菅義偉官房長官が9月末に言い出した。松井一郎知事、吉村洋文大阪市長は以前から大阪市沖の大阪湾に浮かぶ3つの人工島(舞洲、咲洲、夢洲)活用にIR(統合型リゾート、平たく言えばカジノ)誘致を明言し、盛んに安倍政権に応援を頼んでいたが、万博は浪速っ子にとっても初耳。実現すれば大阪では1970年以来55年ぶり、日本では愛知での愛・地球博以来20年ぶりになる。本当に実現するんだろうか?


▲産業育成策や万博誘致を巡って意見を交わす出席者
=9月1日午後、大阪市中央区の大阪商工会議所

経済波及効果6兆円

 まず場所から。南港のすぐ沖にあるのが咲洲(さきしま)。一方でUSJの沖にある野球場やゴミ処理施設、オートキャンプ場のあるのが舞洲(まいしま)。今回、万博候補地として名前が上がってきた夢洲(ゆめしま)は2島の間のさらに沖合にあり、天保山・築港地区の真西に当たる。此花区内で、すべての埋め立てが終了すれば390へクタールと広い。現在未整備で用途未定の250へクタールのうち、100へクタールを使って万博を開催、参加国パビリオンなどを建てる。USJ(ユニバーサルスタジオジャパン)のパーク面積の約3倍に相当、東京ディズニーランドと東京ディズニーシー2つを合わせた面積より広い。

 議論噴出の「当初予算の4倍以上3兆円」と言われる2020年東京五輪建設総額に比べ、会場建設費は1300億円と随分安い。約半年の運営経費740億円、鉄道延伸と埋め立て促進などの関連事業費730億円と全部併せてもせいぜい3千億円。開催2週間の東京五輪に比べ、1970年の大阪万博と同じ春から秋へ半年間の開催で、総入場者では当時の半分弱3千万人と手堅く見込み、それでも運営経費は入場料でペイする。関西一円の経済波及効果は試算で6兆円超といいことずくめ。

万博誘致失敗でもIR建設?

 橋下徹氏の知事、市長としての登場で「市庁舎南港移転」なども画策されたが結局失敗。行政と経済界が一体となって立てたカジノ構想が府民にまったく不人気のため、行政マン得意の言い換え策でIR(統合型リゾート)誘致として打ち出したがなかなか計画理解は得られなかった。

 団塊の世代の浪速っ子にとって、大阪万博の響きは青春の思い出そのもので特別な郷愁がある。仮に万博誘致が失敗しても、その陰でIR建設は絶対実現させる腹なので、カジノ批判の目をそらすには万博がうってつけ。また経済界でも「中国経済躍進に、2008年北京五輪と10年上海万博がセットで機能した。日本も20年東京五輪と25年大阪万博をセットで…」という声があり、「東京五輪後に日本経済が腰折れしては困る」という政府の強い肩入れもある。

 日本維新の会系の松井府知事と吉村大阪市長は、同じ改憲勢力として安倍政権下の官邸とは蜜月状態。菅官房長官は、むしろ「これで一つ維新に貸しを作った」くらいに思っているだろう。

お役所仕事≠ヘ勘弁

 さて実現の可能性だ。パリの博覧会事務局への立候補届け出は政府閣議決定後の来春を想定、早ければ同年内か翌18年早々には開催地が決定する。ライバルはパリ(仏)をはじめ、ロンドン(英)などなかなか手強そう。大阪開催が決まれば、地下鉄中央線を終点のコスモスクエア駅(南港)から夢咲トンネルを経由し、延伸(約3キロ、総工費540億円。通称・北港テクノポート線)。他に主なターミナルからシャトルバス、ベイエリアからシャトル船を出して入場者をピストン運転で運ぶ。

 テーマはすでに「人類の健康・長寿への挑戦」と決定。今年中にもっと細部を詰め、日本らしい禅や温泉なども登場させて、ハイテクや生命科学が集積している関西地域らしい医療サポートなど内容の充実を目指す。

 不安材料は、2020東京五輪開催で問題となった「決定後にどんどん膨らむゼネコンの建設費用」だ。当初予算はわざと安くしておいても、誰が事業全体の主導権を持っているのかはっきりせず、「企業に例えれば、社長と財務部長が不在」という迷走状態に陥り、「始めたらけっして途中で立ち止まらない。最後は、税金で尻ぬぐい」というお役所仕事≠セけは勘弁してほしい。