2016/7/9

そうやったんや! 畑山博史のわかるニュース
英国はズバリ「EU離脱」できない!!

地域まで分断する恐れも

 先月23日、英国が国民投票で「EU離脱」を決めてから、早くも2週間ちょっとが経った。株の暴落、円の高騰で「これからいったいどうなるの?」と心配になった人も多いんじゃないかな。結論から言うと、ズバリ英国はそう簡単にEU離脱はできない。ひょっとしたら永久に無理かも。では分かりやすく説明していこう。

 まず英国と日本はよく似ていて、両国とも島国特有の独自文化にプライドを持ち、自国通貨や国民性を重んじ、経済大国でもある。政治制度も2院制で議員内閣制(議員から首相を選出する)。英王室と日本皇室も親しい。移民に対し消極的な面もそっくりだ。

 ロシア・プーチン大統領が中国・習近平主席と組んで、インドも巻き込んで進めようとしている「大ユーラシア経済パートナーシップ構想」というのがあるんだけど、これを将来のアジア版EU≠ノ見立てて考えてみよう。

 統一通貨ユーロならぬアジアンに対し、日本は英国と同じように自国通貨・円を捨てないだろう。でもアジア版EU≠ヘEU中心国・独仏に相当するロ中2国で何でも決められてしまい、日本の発言権は次第に封じられる。そのうち、ロ中の少数民族の人たちがよりよい仕事と暮らしを求め続々と日本に移り住んできたとしたら、多くの日本人は「アジア版EUを抜け、移民流入を抑えよう」と立ち上がりそうだよね。そう考えると英国の人々のいらだつ気持ちも分かるんじゃないかな。

読み違えたキャメロン首相

 今回、英国で「EU残留か離脱か」を決める国民投票を提案したのは他ならぬ保守党党首のデービッド・キャメロン首相(49)自身。先の総選挙で、反対派を抑える手立てとして公約に掲げたんだ。

 内心は「どうせ、残留派が多いはず」と踏んでいたけれど、名門イートン校─オックスフォード大の先輩で、同党でも盟友の一人だった元ロンドン市長のボリス・ジョンソン下院議員(52)に裏切られ、離脱派のリーダーになられてしまった。51・9%対48・1%の僅差(と、いっても120万票差くらい)で敗れて、キャメロン首相は即日退陣表明をするはめに。代わって有力な首相候補と見られたそのジョンソン議員も「自分は支持基盤が弱く、勝てない」と踏んで立候補を見送ってしまったという流れだ。

 英国は日本と似ているけれど、大きな違いは首相に解散権がないこと。現在の英下院は「EU残留支持派」が77%で3分の2超。離脱派は23%しかいない。仮に次の首相に離脱派が就いても、議会がOKを出しそうにない。反対に、残留派が首相になれば3分の2の賛成で、下院の任期を4年近く残したまま解散総選挙に打って出られる。結果、再び残留派が過半数を占めるのは確実で、これを基に「新たな民意が示された」と離脱自体をホゴにすることも制度上は可能なんだ。

失うものが大きすぎる

 英国にとって、EU離脱は失う物が大きすぎる。やみ雲に離脱に向かえば、国民が割れ、議会が割れ、最後は地域まで分断する恐れがあるからね。今でもイングランドが嫌いなスコットランドや北アイルランドにとっては、独立の動きに勢いをつけることにもなりかねない。

 そもそも英国民が切実に求めるのは、昨年だけで30万人といわれる旧東欧諸国などからの経済移民のストップだけ。シリアなどから逃げ込む人道的難民とは、はっきり分けて考えないといけない。もっとも英国の人口は日本の半分くらいなので、日本で例えると「1年で60万人の移民が流入してきた」ことになる。しかし、それがヨーロッパをはじめとする共同体というものの実態なんだ。

世界中にトランプ現象も?

 世界中の資本主義国では、米国のトランプ現象のように自国の利益だけを考える動きが広がっている。何となくきゅうくつさを感じる大多数の庶民は「どういう将来が望ましいのか分からないが、とにかく現状を変えてほしい」と願うようになり、そこに大衆扇動型のリーダーが現われると、アッという間にミニ・トランプ≠ェ各国で出現することになる。

 日本でも、小泉郵政改革や民主党政権高速道路値下げなどがあったが、今になって考えると「あれで世の中、何が変わったのか?」は判然としない。つまり、英国の国民投票も実はその類いでしかないんだ。仮に英国がEUに離脱宣言を出せたとしても、実際の発効は丸2年後。遠い日本であわてる必要はまったくないよ。