2016/6/11

そうやったんや! 畑山博史のわかるニュース
消費増税再延期の舞台裏 

経産省派の安倍・菅コンビは盤石か?

 5月26、27日に伊勢志摩サミットが終わり、オバマ米大統領が広島を訪問したと思ったら、その週末くらいから急に「消費増税10%引き上げ再延期」の嵐が永田町に吹き始め、先週1週間で何やらアッという間に決まってしまった。そりゃ、一般市民にとって税金は1円でも安いに越した事はないが、日本の将来を考えるとホントに大丈夫なんだろうか? この1週間の官邸VS官僚の攻防と、我が国の財政を分かりやすく解説しよう。

国のふところ事情、4割が借金でやりくり

 日本の財政は、1軒の家に例えると、年収600万円しかないのに、年間に使うお金は900万円を越えていて4割近くが借金。それが積もり積もって1億500万円に膨らんで、もう到底一代では返せず子どもや孫の代までかかりそう、という感じだ。

 「財政立て直し」を掲げる財務省の基本方針は「(税金は)取りやすいところから取る」。安倍政権発足以来、消費税が8%に引き上げられ、10%への再引き上げは今回見送りと決まって、大半の国民は喜んだ。これには裏があって、個人課税はすでに知らないうちにどんどん強化され、所得税、住民税、自動車税などが引き上げられ、子育て給付金は廃止、介護報酬や福祉給付金、生活保護費もカットされているから、消費意欲が出ないのも当たり前。

 なのに大企業にはとても配慮が行き届き、消費増税と引き替えのはずだった法人減税はそのまま実施。代わりに外形標準課税を拡大して赤字企業からも税金を取り立て、中小企業の経営は苦しさを増すことに。

官邸、選挙意識し 消費税再延期

 消費増税延期で喜んでいるのは、どの業界か? これは株価の動きをみればある程度分かる。住宅関連や自動車などの高額の買い物はしやすくなるし、外食や宝飾、ファッションなどの業界もメリットがある。増税前の駆け込み特需こそなくなったが、当面増税後の買い控えを心配しなくて済むからだ。

 2020年の東京五輪を一つのゴール点として考えると、現在の再延期措置が期限切れして10%になるのは前年19年の秋。

 この年は春に統一地方選、夏に参院選と選挙年でもあり、それより前の消費増税は投票結果への反動が大きいので総理が避けた格好だ。もっとも安倍総理の自民党総裁任期は現時点から見て再来年18年の9月、現在の衆院議員の任期満了がその年末。つまり、19、20年の一連の政治日程は、通常だと次の総理と総選挙を経た次の国会議員が手がけることになるはずだ。

 安倍さんは、サミットで「世界経済の停滞」を演出しようとして失敗し独り負けがバレてしまったんだから、この際「アベノミクスはすべてうまくいっている訳ではありません」と見込み違いを白状してわび、国民に新たな方向性を訴える絶好の機会だったのに、ツッパって逸してしまった。本来、消費増税延期なら財政を引き締めないと計算が合わない。それをせず国債をバンバン出す金融緩和だけで乗り切るのはもう無理。実態経済を構造改革し、国民所得を上げないと結局何も変わらないと思うよ。

安倍・菅 VS 麻生・谷垣

 今回の消費増税引き上げ再延期の際、官邸の安倍・菅VS財務省ダミーの麻生副総理兼財相と谷垣党幹事長との対決が表面化した。その裏事情を少し説明しておこう。

 安倍・菅の官邸コンビは経産官僚と極めて仲が良く、ライバルの財務官僚は遠ざけられている。財務官僚は国会議員懐柔が極めてうまく、消費税8%を決めた野田佳彦前総理(旧民主党党首)や今回衆参ダブル選を主張した麻生副総理は財相着任前から比べると、主義主張がかなり財務省ベッタリになっている。

 官邸コンビが財務官僚と決定的に関係悪化したのは、財務省OBで自民党税調のトップだった野田毅衆院議員をその任から外した昨秋から。「このままでは、消費増税再延期もありうる」と危機感を抱いた財務官僚は、麻生副総理を持ち駒に「安倍総理の体調不良を理由に、伊勢志摩サミットを花道に勇退」を必死で画策したが果たせなかった。

 財務官僚は当分死んだふ り≠ナ、安倍政権を見守るだろう。「少子化の日本で個人消費回復、税収の自然増なんて当分無理。だから時間をかけて社会保障費確保を名目に消費税をジリジリ上げ、国民からドンドンお金を頂くしかない。そのために国債乱発にもジッと目をつむって企業優遇しているのに…」と腹をくくっている。