2016/5/28

そうやったんや! 畑山博史のわかるニュース
燃費偽装はなぜ起きた? 底流に自動車業界の大変革

環境対策と自動運転で競争

 三菱自動車の燃費偽装に続き、スズキでも明るみになった燃費データ不正。燃費と排ガスの数値は、エコカー減税やクリーン化特例に直結するからマイカー購入の大きな選択肢の一つになっているけれど、そもそも「ガソリン車のカタログに出ている燃費で走るのは、絶対ムリ」ってマイカー所有者なら感じているはず。今回はこのあたりの謎を解くのと同時に、マイカーの未来についても考えてみよう。

2年後に世界基準化

 燃費は「1リットルのガソリンでどれくらい走れるか?」という目安。日本では10、10・15、JC08と基準は変わってきたけれど、「実燃費はカタログデータより平均して6割、上手な運転で7、8割行けば上出来」というのが実態かな。だから元のデータを偽装しようが不正使用しようが、ユーザーが気付かなかったのも当然なんだ。

 EU各国はNEDC、米国はLA4という別の基準を採用していて、日本より実燃費に近い。訴訟社会の米国では、「燃費データ通りに走らない」と韓国・現代(ヒュンダイ)が巨額の制裁金を課せられ、自国のGMにも燃費データ不実記載で金券による還元義務を課したんだ。

 こうした動きに、燃費データの国際統一「WLTP」が国連自動車基準世界フォーラムで採用され、米国とEUをはじめ、日本や韓国、インドなどで2年後の一斉導入が固まったよ。そうなれば、ごまかしやばらつきは解消できるだろうね。

国交省もようやくOK

 新聞やテレビで、しょっちゅうバスやマイカーが暴走し多くの方が死傷したり、高齢ドライバーのアクセルとブレーキの踏み間違いを目にするよね。そこで前方のセンサーと連動した「自動ブレーキ」や、アクセルとブレーキの「踏み間違いアシスト」、飲酒運転ができないようにする「呼気感知」など、各国の自動車メーカーは必死で先陣争いを繰り広げているよ。IT関係に強い米国が「人工知能」で一歩リードだ。

 日本は行政縦割り組織の弊害で、この分野の取り組みが世界に比べ遅れていたけれど、2020年の東京五輪を前に行政機関が「東京安全都市宣言」を出し、180度方針を転換したよ。

 EU各国では、すでにバスなどの大型商用車に自動ブレーキの設置が義務付けられ、米国も2022年までに全車種に自動ブレーキを設置する。いつまでも日本だけ乗り遅れていると、「国際競争力を失ってしまう」と焦ったんだ。

技術と資本の提携次々

 こうした「エコを含む環境対策」と「自動運転」の技術革新は、実は莫大な研究開発費がかかる。このため、世界市場でシェアと技術革新の2大競争を勝ち抜くには、1社単独で対応するのはほぼ不可能になってきているんだ。

 燃費偽装から販売不振に陥った三菱自動車を、日産自動車が救済する案が発表された。右記は2015〜16年の自動車メーカー販売台数ランキングだけど、現在4位のルノー・日産グループに三菱自動車の107万台が上乗されると、ビッグ3に迫る規模に。しかもEU内で強いルノー、北米の日産、アジアの三菱と3ブランドの住み分け、カルロス・ゴーン社長の巧みな戦略が見えてくるよね。

 もっとも、日本の他社も手をこまねいているだけではない。トヨタは軽自動車のダイハツ、トラックの日野、独自ブランドとして特徴のある富士重工(来年「スバル」に改名)と資本提携し傘下に収めた。ホンダはGMと技術提携、日産はすでにベンツのダイムラー社と資本提携している。

 日本で独自路線を行っているのは、クリーンディーゼルに強く昨年フォードとの提携を解消したマツダと、軽自動車のパイオニア・スズキだけど、いずれは資本や技術開発で提携しないと生き残りは難しくなりそうだ。

 今回浮かび上がった三菱自動車の問題は、すごいスピードで変革する自動車業界が底流にあるんだ。