2016/4/23

そうやったんや! 畑山博史のわかるニュース
課税逃れの実態を暴露する「パナマ文書」

富裕層の不都合な真実=H

 富裕層の節税実態を記した「パナマ文書」が流出し、世界中で大きな問題になっているね。たった1%しかいない大金持ちのお金の流れが報道機関の分析を経て、5月に明らかになるよ。今回はこのパナマ文書に関して詳しく解説しよう。

 企業や大口納税者が払う税金の額を減らすため、タックス・ヘイブン(租税回避地)を使った合法的な節税策に励んでいる。その典型的なやり方を見てみよう。

 日本のA社が、1億円を米国の企業に投資したとするよ。通常なら法人税3割、つまり3千万円が課税される。でも、同じ1億円をタックス・ヘイブンにあるB社を経由して絵画を1枚買ったことにして米国に投資すれば無税になるんだ。日本の税務当局は、B社からの資金の流れをつかめないからね。

 あるいは、A社が1億円の商品を米国企業に売却する際、B社を間に挟む。仮にうんと安い1千万円でB社に商品を売却、B社が米国企業に1億円で転売すれば、B社には無税の収益がガッポリ残るという仕組み。

 B社のあるリゾート地は、観光以外にほとんど産業がないから、仮に各種商取引そのものが非課税でも、街に金がドッと集まり、それに伴って多くの金持ちの外国人がその地を訪れマンションや別荘を購入すれば、雇用や消費が生まれ十分メリットがあるんだ。

■正直者はバカを見る?

 タックス・ヘイブンは、世界に50カ所以上ある。その特徴は外国人に対して、@税金ゼロかごくわずかA法律で顧客の厳密な機密保持が保たれているB金融などに対する法規制が緩い、が共通している。

 いったいどんなお金が、タックス・ヘイブンに集まるんだろう。かつて不正蓄財で国を追われたフィリピンのマルコス大統領夫妻の膨大な隠し資産は有名。また、アフリカ諸国がいつまでたっても最貧国から脱出できないのも、「独裁政権幹部による不正蓄財が背景にある」といわれているよ。

 ただし、「パナマ文書」に名前が挙がっても、直ちに違法とはいえないよ。でも、タックス・ヘイブンで扱われている総額は一説では3千兆円とも言われ、間もなく任期を終えるオバマ米大統領は「多くの取り引きは合法とされるが、それこそが問題なのだ」と嘆いているよ。

 本来、その国の社会資本を使って儲けたお金は、その国と国民に還元させるべきもの。「経済活動をガッチリ行って、儲けは全部海外へ…」では、その国はいつまで経っても発展しないからね。結局は、国に入るべき税金が国外に流出し、個人への課税だけがガッチリと強化されてしまう。これでは正直者がバカを見るということになってしまうからね。

■G7サミットに注目

 でも、タックス・ヘイブンはけっしてなくならないよ。小国が生き残りを図って、流入金を無税化し自国の繁栄を企てる金融システムを、他国が力で阻止する手立てはないからね。

 5月に日本で行われるG7サミットは安倍総理が議長。ちょうどその時に、ICIJから提供される「パナマ文書」の分析資料に対し、どんな反応をした上で国際金融システム構築に安倍総理がリーダーシップを発揮するか注目だよ。

英国の世界金融支配

 タックス・ヘイブンの最大のグループは、「シティ」と呼ばれるロンドン金融街と裏でつながっている英国系。英本土周辺のマン島などの王室領、ケイマン諸島やヴァージン諸島などの海外領土、そしてロンドン金融街と結び付いている香港、シンガポール、バハマなどかつての植民地。陽の沈まぬ国≠ニいわれた大英帝国は、表面上は崩壊したけれど、実際には裏で世界金融を今も牛耳っているよ。

マスコミの反応

 与党支持派の読売・産経・日経は「パナマ文書」に関して、キャメロン首相をめぐる英国議会の動向は報じても、日本の政治家や財界関係者の名前はウワサ話も含めて及び腰。一方、文書の解析に携わるICIJ(国際調査報道ジャーナリスト連合)と提携し加盟もしている朝日と共同通信は手ぐすね引いて、5月の情報公表を待っているよ。同じ与党批判派の毎日も同様のスタンス。日本のマスコミは普段の政府に対する姿勢で、真っ二つに割れているんだ。