2016/2/27

そうやったんや! 畑山博史のわかるニュース
北朝鮮はなぜ暴走する? 核開発は独裁維持のため

 朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)の核開発と事実上のミサイル発射の連鎖が止まらない。自らも加盟している国連で非難決議されようが、6カ国協議のメンバーである日米韓から制裁措置を受けようが、盟友・中国を怒らせようがまるでお構いなしだ。

 私は駐大阪韓国総領事館が主宰する北朝鮮情勢分析のための研究組織「半島フォーラム」の一員だし、大阪生まれ大阪育ちで、子どものころから在日韓国・北朝鮮籍の友人・知人も多い。だから、この問題には詳しいんだ。

 読者のみんなは北朝鮮が「なぜ、こんなことをするの?」という背景を知りたいんじゃないかな。今回のニュースを機に、北朝鮮のことを理解してみよう。きっと、今後のニュースが分かりやすくなるよ。


本気で気にする相手は米国だけ

■ 核兵器の開発 ■

 核開発の研究は旧ソ連の手を借りて、第二次大戦が終わった直後の1950年代から着手している。

 当時の北朝鮮は欧米にほとんど相手にされなかった。巨大な原子爆弾を他国に送り届ける技術がなく、実戦に使えないからなんだ。だけど、その後の技術の向上はすさまじく、原爆の小型化やケタ違いの破壊力を持った水素爆弾の開発、さらに米国の首都・ワシントンを狙える航続距離の長いミサイルの開発に成功したんだ。

 ■ 現体制の維持を ■

 では、本題に入ろう。北朝鮮が核兵器とミサイル開発に力を入れる理由はなんだろう。それは、一にも二にも今の独裁体制を維持することなんだ。

 まず韓国と中国は実は怖くない。両国とも北朝鮮が崩壊すると、大量の難民を受け入れなければならなくなり、膨大な経済負担がのしかかってくる。北朝鮮はそれを分かっていて完全に足もとを見ているんだ。

 日本の場合は拉致問題さえ解決すれば、友好条約の締結もできる。さらに、のどから手がでるほどほしい戦前の保証金も手に入る。今回打ち切りを表明した拉致調査の引き延ばしは、日本への切り札を維持する作戦だけれど、金が入らないデメリットもある。

 こうして背景をひも解けば、北朝鮮が気にしているのは米国だけ。アフガニスタンやイラクのように軍事介入で政権を崩壊させられたり、チュニジアやリビアのように民主化運動を起こされてはたまらないからね。米国には一刻も早く制裁を解除してもらい、今の独裁体制を維持する保証を得たい。

 だから今回、オバマ政権が敵対するキューバやイランの制裁解除に踏み切ったから、「次こそ自分たちの番」と北朝鮮は熱い期待を寄せていたんだ。

 ところが、オバマ政権にはさっぱりその気が見えない。だから、立て続けに核実験やミサイルを発射して、「もし政権を崩壊させる気なら差し違えるゾ」とアピールしたんだ。米国が中国と対立している限り、自分たちに手を出さないのを承知した上での行動さ。

 ■ 外貨獲得の宣伝も ■

 北朝鮮は核ミサイルで、各国との立ち回りを優位に進めようとしているだけじゃない。外貨を獲得するビジネスの側面もある。人工衛星を打ち上げた後の派手な宣伝活動は、国内的には「国民に苦しい思いをさせているが、世界に誇る科学技術を確立した」という大衆へのアピール。

 一方、紛争している国などに対しては、核開発とロケットや衛星打ち上げ技術を「ウチなら安く提供できますよ」と宣伝しているんだ。


足元見透かし強気な外交

 北朝鮮に最も大きな影響力を持つ中国は、経済停滞という深刻な問題を抱え、今や北朝鮮どころではなくなってきている。米国も次期大統領選が佳境に入り、今秋の本選に向けた指名争いが混迷している。こうなると日韓両国は、北朝鮮の挑発に過剰反応せず冷静に対応するしかない。

 こうした各国の足元を見透かしたような金第一書記の強気な外交に、有効な打つ手は当面見当たらない。


<北朝鮮のルーツ>

 第二次大戦前の朝鮮半島は日本の一部だったが、戦争が終わると韓国と北朝鮮に分かれて独立し、韓国には米国、北朝鮮にはソ連が付き、朝鮮戦争が勃発。60年以上が経過した今も休戦状態が続く。 その間、ソ連は崩壊し、北朝鮮は中国に乗り換え生き延びてきた。政治的には中国と同じ共産党一党支配をうたうが、金日成、金正日、金正恩の親子三代で世襲が続き、王政そのもの。朝鮮労働党は「卓越した指導者がたまたま子息だった」と言っている。