2016/2/13

そうやったんや! 畑山博史のわかるニュース
日本初のマイナス金利って何? 日銀黒田バズーカの弾切れ近い

 日本銀行が我が国金融史上初のマイナス金利導入を発表し、いよいよ来週16日から実施される。

 今でも銀行の普通預金は100万円預けても年利0・02%程度で200円というめちゃくちゃな低額なのに、いよいよマイナスという事は「お金を預けたら、手数料取られるの?」との不安に襲われる。

 実は日銀に市中の金融機関が一種の「保険」として預けている預金に対してだけのマイナス措置で、一般預金者と金融機関の利子が下がる話ではない。

 しかし、導入を前に三井住友、三菱東京UFJ、みずほの3大メガバンクは定期預金金利のさらなる引き下げを発表。投資信託や個人向け国債が一時取引停止に陥るなどジワジワ影響が出ている。預貯金に頼る年金暮らしの高齢者はますます生活が苦しくなる。一方で住宅ローンはかつてない低利で借りやすく。その背景を追ってみよう。

日銀、市中金融機関へ貸し出し緩和のメッセージ
金融機関も一般消費者も自己責任で運用益を
金融緩和の実質効果は懐疑的

金融緩和、賛否際どい数字

 日銀に、市中金融機関は急な払い出し増に備え一種の当座預金を預け、それに年利0・1%が付いている。一般預金者に比べずいぶん高率でその預金総額は270兆円もあるから、利子だけで年間270億円にものぼる。3大メガバンクは、さらに加算金を積んでこの利子を手に入れ、収益の一部としていた。日銀の今回の措置は「最低限の引当金以外には、手数料を取りますよ。だから、そのお金は市中に回してね」という意味だ。

 黒田総裁はこの奇策を「マイナス金利付き量的・質的、金融緩和を導入する」と説明し、1月29日の日銀金融政策決定会合に諮り、政策委員の賛否は5対4という際どい数字で認められた。賛成派の総裁側は「更なる金融緩和で早期にデフレから脱却する」と意気込むが、反対派は「実質経済に効果が見込めない」と懐疑的だ。

日本1国の手立てに限界

 発表後は、一時株高・円安へ進んだが、1週間後には元のもくあみ。黒田総裁は2013年3月の就任直後に「物価上昇目標2%」を掲げ満2年での達成を約束したが結局何度かの先送りのまま実現せず、今日に至っている。このところ、足もとの景気は後退しっ放しで企業の生産活動を示す鉱工業生産は2カ月連続、世帯当たりの消費支出は4カ月連続でそれぞれマイナス。世界的な景気減速の原因は「中国経済減速、原油安、米国金利引き上げ」とすべて外国での出来事が理由で、日本1国での手立てなど実は無駄な抵抗なのだ。

 日銀が必死に金融緩和をしても、円安で空前の高収益になり懐が温かい大企業に借り手はなく、中小企業には銀行の融資基準が変わらないから逆に必要な金が回らない。この間、メガバンクですら三菱東京UFJとみずほが国内資金運用(総資金利ざや)でマイナスに転落しており、もっと苦しい地方銀行を含め金融界は経営再建に躍起。つまり、日銀がやっていることは「金融機関も一般消費者ももう預金金利は付かないんだから、もうからなくてそんなに困るんなら、株式や債券を自己責任で買って運用益を得なさいよ」というかなり荒っぽい理屈だ。

 加えて、経済最優先でアベノミクスへの期待感だけが頼みの安倍政権にとっては、経営者側に対し法人税引き下げのアメと引き替えに「設備投資せよ」「賃金を上げよ」などとムチ打ちも直接下してきただけに、ベースアップの正念場「春闘」を前に、この時期を逃せない事情もあった。

庶民感覚、物価安のデフレがマシ

 では、一般の人々にとってマイナス金利政策のメリットとデメリットを考えてみよう。まずプラス面から。借金する方は断然有利。住宅ローン・教育ローンはグンと金利が低くなる。特に固定金利系の融資を受けていて、借り替えるなら今が絶対のチャンスだ。

 一方のマイナス面。預金金利はさらに下がるからせっせと預金してもまったく増えない。こういう時は、かつての豊田商事みたいな高齢者を狙った投資詐欺が横行するので要注意。勤め人の給与アップ期待は、毎月勤労統計調査で昨年11月の速報値がすでに5カ月ぶりマイナスに転じていて望み薄。つまり、大企業と中小企業・非正規労働者の賃金格差はますます広がる。雇用その物も非正規を制度的に規制しない限り抜本改善できない。安く人がいくらでも雇えるのに、途中採用で正規社員にする会社なんて増えるはずがない。さらに無理な円安の影響で輸入に頼る小麦粉、大豆、トウモロコシなど食品関係の値上げがジリジリと続く。

 黒田総裁には悪いが「給料も預金利子もアテにならないなら、物価安がずっと続いてくれたデフレ時代の方がよっぽど生活はマシ」というのが普通の庶民の実感ではあるまいか?