2015/11/14

そうやったんや! 畑山博史のわかるニュース
極東アジアで今、何が?

緊迫する南シナ海、3年ぶりの首脳会談…

 日本を取り巻く極東アジア情勢が騒がしい。先月末から今月に掛けてだけでも、中国の南シナ海・南沙諸島支配に対する米軍艦通過強行、3年ぶりの日中韓首脳会談開催、さらに戦後初の中台首脳会談と矢継ぎ早に大きな話題が続いた。いったい今、日本を取り巻く世界の中で何が起きているのか問題整理してみよう。

 外交問題を考える時に、重要なキーワードが三つある。まずは英国のパーマストン首相が言った「永遠の友も敵もいない。あるのは永遠の国益だけ」。つまり自国がすべてということだね。

 続いては「敵の敵は友」(古代アラビア)。変じて「敵の友は敵」という三段論法もあり、挟み将棋のような状況を指すんだ。

 最後は中国の古事から「内外(内面の失敗を外部で補う)」。権力者は自分の失政をごまかすため、外に悪役を仕立てたりもめ事を演出したりするという意味。

 一般社会と外交は実に似ていて、「腕力の強い暴れん坊に逆らったらケガをする。でも、自分独りは弱くても皆で力を合わせれば何とか…。いざとなったら警察(外交の場合は国連)に頼もう」という発想なんだ。

 以上を踏まえて、今の極東アジア情勢を照らし合わせてみよう。

外交交渉 各国の本音は? 強い言葉とは裏腹に…

オバマ大統領怒る

 今回、日中韓と中台の首脳会談が注目されたね。実はこれ、中身よりも「やりましたよ」という形式的な面が大きいんだ。何かを「絶対に決める」と決意して臨むTPP会合などとは性質が違う。

 なぜ、そんな面倒なことをするのって思うよね。では順番に解説していくよ。

 米国はこれまで、紛争が起きると積極的に軍事介入する世界の警察≠ニして、安全保障を一手に担ってきた。ところが、国内の深刻な不況で、かつてのような力を失い、同盟諸国に役割分担を求めてきたんだ。

 その隙を突いたのが、世界2位の経済大国、中国さ。習主席は米国の陰りを見透かし「太平洋を米中の2カ国で管理しよう」と持ちかけた。ところが、反対にオバマ大統領を怒らせてしまったんだ。

 その結果が、日本の安保法成立であり、韓国への「歴史問題を直ちに解決せよ」との要求なんだ。

強気な安倍総理

 チベットや新疆ウイグルへの封じ込めを見ても分かるように、中国は領土問題において内外で一歩も譲る気はない。尖閣や南シナ海もそう。もともと考え方の異なる50以上の民族のいる国だから、政権に批判が向くと、外に共通の敵を作って国内をまとめるんだ。冒頭(1面)で説明した「内外」っていう言葉そのままだね。

 一方の韓国は、日本に甘い顔をすると、国内から批判を浴びる習性のある国なんだ。朴大統領は支持率への影響を考えている。

 では、日本はどうか。今回、安倍総理は韓国とのチキンゲーム(どちらかがビビッて降参する外交交渉)に一歩も引かなかった。従軍慰安婦の交渉では、「別に会談が流れてもいいよ」と強気な態度で突っ張った。内政が安定しているからこその強硬姿勢で、これが韓国との決定的な差になったんだよ。

 中国にとって厄介者は米国だけ。国際法を盾に、米国が南シナ海へ軍艦を進入させると、早々に両国が実務者会談を開いている。強い言葉と裏腹に、お互い本気で事を構える気はないのが本音なんだ。

 習主席が台湾の馬総統と会ったのも、お互い「一つの中国こそベスト」という共通認識から。つまり、台湾の独立運動は避けたいという双方の利害が一致した結果なんだ。

 東南アジア諸国連合(ASEAN)各国も、国力が違いすぎるから本気で中国の南シナ支配を止める気はないんだ。

政治的緊張とは別に経済交流は盛ん

 この複雑な外交とは裏腹の動きをするのが経済さ。日中関係を表すのに「政冷経熱」という中国語がある。「政治的には冷ややかでも、経済交流は盛んに」という意味なんだ。

 その象徴が日中韓の首脳会談前に開かれた3カ国の経済貿易相会合さ。「3カ国間で自由貿易協定(FTA)を早々に進めて行こう」と合意している。「政治ではいろいろあっても、経済は仲良くやろうね」ってこと。

 実は米国もそう。中国は米国債を大量に購入してくれるお客様だから、中国景気が失速したら、米経済は大打撃だからね。

 政治的なもめ事とは別に、経済は国境を越えて進むのが現代社会の姿なのかもしれないね。