2015/9/26

そうやったんや! 畑山博史のわかるニュース
安保法成立で何が変わる? ポイントは集団的自衛権

 さて、今号のテーマは安保法成立について。先週の参議院で大もめにもめた「安全保障関連法」の計11本が、安倍晋三総理の思惑通り、一括して可決成立したね。

 これで戦後の歴代政権が一貫して禁じてきた集団的自衛権の行使が可能になった。これまでも自衛隊は国連平和維持活動(PKO)に派遣されてきたけれど、今後は米軍だけでなく、他国軍への地球規模での支援活動ができるようになる。

 この安保法をめぐっては与野党だけでなく、マスコミ各社でも意見はさまざま。このため、実際のところがさっぱり分からず、自分自身の判断が持てない人も多いのではないかな。

 この安保法成立で、「何が変わり、何が変わらないのか?」を一緒に考えてみよう。

 可決した法律は11本もあってややこしく感じるかもしれないけれど、この問題のポイントはただ一つ、「集団的自衛権」なんだ。要するに、他の国と一緒になって自分の国を防衛する権利。簡単におさらいすると、もともと持っている個別的自衛権は、自分の国が攻撃されたときに守る権利。一方の集団的自衛権は、仲の良い国が攻撃されたときも、自分の国が攻撃されたのと同じと見なして反撃できるようにする権利なんだ。

 この個別的自衛権を含め、国家が自衛する権利は国連でも認められている。これまでの日本は、憲法9条があるから「最低限の自衛権はあっても、集団的自衛権は認められていない」という立場だったんだ。

 仮に日本が攻撃された場合、憲法9条があるからと反撃しなかったら、戦争行為自体をすべて禁止する国連が、国連軍を組織して派遣してくれる。とはいえ、安保理の常任理事国はそれぞれ拒否権を持っていて、利害が一致せずに1つの国が反対すると国連が一丸となって動けなくなる。ウクライナとロシアの紛争が良い例だよね。

 安倍総理は、ホルムズ海峡で機雷を撤去したり、朝鮮半島有事での米艦を守ったりすることを「ただちに念頭には置いていない」と言っているけれど、それならどこで集団的自衛権を使うんだろう。

 米国の要請で、仮にイラクやシリアに出掛けてIS(イスラム国)と争うことになると、戦地で自衛官が危険にさらされるだけでなく、世界各地でテロを仕掛けているISが日本国内で無差別テロを起こすかもしれないというリスクも出てくるね。

官僚に染みつく米国追従

 日本の義務教育は近代史学習が特に弱く、外に向けた自衛権と内に向かう警察権の違いでさえ教えていない。世界は東西冷戦の20世紀から、民族や宗教の違いを根っこに、国家間で領土争いをする21世紀になった。仲の悪い国どうしが大陸間弾道ミサイルを撃ち合うかもしれないし、サイバー攻撃は瞬時に国境を越える。こういう時代に集団的自衛権、つまり米国主導で「日本が守り切れるのか?」との声もある。

 日本の官僚はとにかく米国に弱い。「(当時のソ連に対する)日本不沈空母」論の中曽根康弘政権や、郵政改革で大ナタを振るった小泉純一郎政権が長持ちしたのは徹底して米国寄りだったから。反対に中国寄りの田中角栄、小沢一郎、ロシアと親しい鈴木宗男、北朝鮮とパイプのあった金丸信らは、官僚である検察につぶされた。だから、安倍総理が安保法の成立をオバマ米大統領に約束したのも、官僚の意に添う米国追従外交≠フ延長線上にあると思うね。

憲法改正は国民が判断

 次に「立憲主義」だ。今回の安保法を含めて国会は法律を作ったり、止めたりする場だ。でも憲法だけは国会の3分の2以上の賛成で改正を提案でき、最終決定は国民投票で過半数の賛成が必要になる。

 つまり立法府も憲法だけは勝手に変えることができないんだ。自民党は自主憲法の制定が党の方針だけど、そのハードルはとてつもなく高い。憲法はその時々の政権によって解釈を変えてはならないのが大原則。だからこそ、「安保法は解釈変更ではなく、憲法改正を先に」という本筋が語られるんだ。これも読者のみなさんの判断だ。

徴兵制は無理

 最後に、徴兵制の論議にもふれておこう。米国ですら廃止した徴兵制の導入は、日本でははっきり言って無理だ。とはいえ、米国の志願兵の実態は、移民が永住権をもらうために軍に入ったり、貧困層の若者が生活していくために兵士になったりしている。だから、格差の拡がり続ける日本では、非正規雇用でも働けない人が、今度は自衛隊に職を求める流れになるかもしれないね。

 私は有権者のみんなが@尖閣諸島問題が象徴的な対中国政策をどうするか? A世界の警察≠フ役割に疲れ、国益第一に回帰する米国とどう付きあうか?B本音は第1次政権発足時のスローガン「戦後レジーム(体制)からの脱却」と「美しい国日本を取り戻す」の安倍総理の評価、の3点を次の国政選挙でよく考えたらいいと思うよ。