2015/8/8

そうやったんや! 畑山博史のわかるニュース
TPPなぜもめる?

 ハワイで開かれていたTPP(環太平洋パートナーシップ協定)を巡る交渉12カ国の閣僚会合が日本時間の8月1日、大筋で合意できないまま閉幕した。このTPP、読者からすればイマイチ分からないのが本音なんじゃないかな。

 最終日直前の7月31日付の朝刊各紙を見比べてみても、大阪日日は「日本産牛肉関税、米国が撤廃へ」、日経は「日米間、コメと自動車でせめぎ合い」、読売は「マグロ・サケなど関税撤廃へ」、朝日は「小麦関税減額へ」、産経は「知的財産権、米国が譲歩」と見事にTPP関係の記事はバラバラだ。

 それだけTPPの中身が多岐にわたり、複雑だということ。各国は、自国の商品を海外で売りやすくするために関税を引き下げるというTPPの総論≠ノは賛成している。でも、海外から安い商品が輸入されると売れなくなる自国の商品に関しての各論≠ノは反対という姿勢を崩さない。だから、なかなか決着がつかないんだ。

 読者目線では、このTPP妥結によって、自分たちの生活がどう変わるのかが気になるところ。今回は家庭を中心とした損得からTPPを考えてみよう。

TPP妥結で生活どう変わる?

EUを例にすれば分かりやすい

 TPP妥結後の将来については、EU(欧州連合)の姿を見れば分かりやすい。EU28カ国は共通通貨のユーロを使い、加盟国同士の関税はゼロ。だから、経済的にはドイツもフランスも一つの国と同じという見方ができる。TPP加盟のニュージーランド貿易相が「われわれの最終目的は関税ゼロだ」というのもEU体制を意識したものなんだ。

 その分、先日のギリシャのように一つの国が経済危機に陥ると、互いに支え合っているから大騒ぎになる。これが経済統合したときの象徴的なメリットとデメリットなんだ。

経済の合理性だけで進めないワケ

 国家の理想は、得意な分野は「国内消費と輸出してどんどんもうける」。一方、苦手な分野は「ムダな手間を掛けず、全部輸入すれば手っ取り早い」。生産と消費の効率を徹底して高めれば、その分ムダがなくなり経済的にはプラスだ。

 でも、そう簡単にはいかない。最大の理由は「特定部門で他国に生殺与奪権を握られては困る」からなんだ。かつて、戦前の日本が欧米列強と険悪になり、石油が入ってこなくなって太平洋戦争に突入した歴史を見ても分かるよね。それに産業構造が各国で極端になり、切り捨てられた業種に関係する国民は失業してしまう。

日本が目指す巨大な自由貿易

 実際にはEUみたいに完全に経済を統合する形は、アジア太平洋地域では国家体制に大きな差があるので不可能だ。そこで日本は、太平洋地域でのTPPだけでなく、EUとの経済連携協定(EPA)や東アジア地域包括的経済連携(RCEP)、さらに中国・韓国との3カ国FTA(自由貿易協定)などをうまく組み合わせて、輸出入の貿易を盛んにする巨大自由貿易協定(メガFTA)を目指している。

 だから、その1丁目1番地≠フTPPの遅れは大手企業中心の財界にとって痛手だし、円安誘導で輸出振興に望みを託す安倍内閣としてもアベノミクス遂行のブレーキになりかねない。

安い商品が流入商品選択も多彩に

 では最後に、読者の台所への影響はどうか?ズバリ、輸入に頼る小麦やバター、牛肉などは値下がりする。ワインなどの洋酒、豚肉も下がる。これらを国内で生産している農家や酪農家は高額でも高品 質≠フ商品として、さらに工夫していかないと輸入物に対抗できなくなる。

 外食産業では、こうした低価格輸入品の使用が増えるので、収支は好転。値段か味か消費者側の志向性にも反映されそうだね。

 では、TPPの行方はこれからどうなるのか。裏話をすると、実は時間を掛けてじっくり議論をしている格好をしているけれど、はっきり言ってこれはお芝居。「これだけ議論したんだから仕方ない」と持って行きたいのが本音なんだ。