2011/10/22
「大阪都」構想 府民・市民の生活にどう影響?
橋下氏流の強権的な改革〃S 平松氏のボトムアップ改革
11月27日に投開票が決まった大阪市長選。橋下徹知事が率いる「大阪維新の会」と、平松邦夫・大阪市長が激突する構図は決まっているが、その争点は大阪市を解体・再編して司令塔を一つにする「大阪都構想」の是非だ。しかし、未だに府政、大阪市政の政局ばかりがクローズアップされ、「大阪都」構想というフレーズだけが独り歩きしている。多くの府民、大阪市民にとって都構想の導入の是非は生活にどのように影響するのか。
都構想の柱は「大阪都」への権限集中
橋下知事は知事に就任以来、現在の耐震性に問題がある本 庁舎(中央区大手前)を南港のWTCに移転することを提唱。 これに対し、自民の一部府議を除いて反対意見が大勢を占めた。
これまで橋下与党≠ナあった自民府議団の賛否が分かれ、移転賛成の府議らが自民党を離党し、維新の会を結成した経緯がある。
橋下知事が大阪都構想の端緒となる考えを表明したのは約1年前。「大阪市を解体し、府と市を一体化し国際的な競争力を持つ都市圏を形成しなければならない」と主張した。
「都」構想の柱は「広域行政を現在の大阪府のエリアで一本化」「大阪市内に公選の首長を8から9人置き、住民に身近な行政サービスを担わせる」−2本柱で、その流れで大阪市役所も解体・再編するという。
維新の会の浅田均府議会議長 は「広域行政とは大阪全体のグランドデザインを描き、大阪都に財源を集中して、行政をしないとアジア・世界と勝負できない」と危機感を示す。
平松氏、大阪都構想は「大阪都妄想」と批判
これに対し、大阪市会の民主系市議は「都構想は、企業や産業を誘致し活動しやすく仕事すること。平たく言えば、カネを稼ぐ部門は都=府が担当することだ」と都構想の本質を解説する。
都構想では空港、港湾、高速道路、鉄道などのインフラを整備。さらに「人材を獲得しやすいよう」に教育機関の競争力の向上を打ち出す。また、「府民が暮らしやすいよう」にと企業目線から病院や初等教育機関の整備を行う方針。このほか法人減税や規制緩和を軸とした特区の設定、橋下知事のカジノ構想を含めた観光客の誘致などが広域行政に含まれる。
大阪都への権限の集中に対し、平松邦夫市長は集会で「地方分権に完全に逆行する考え。カネと権限を中央に集めて地方に分配した高度成長期の夢にすがるような発想。大阪都構想は中身がない、『大阪都妄想』だ」と批判。
さらに、維新の会の地域行政に対しても「地域の問題意識や住民の創意工夫を救い上げ、行政はそれを解決・実現するためにサポートするという、これから目指すべき自治や協働の発想が、彼らにはまるでない」とボルテージを上げる。
「特別区長」の存在は?
大阪都構想のもう一つの目玉が大阪市域の再編だ。維新の会は市域を分割して公選首長を置くこと自体が「区ごとに地域に応じた予算を編成し、区長を競わせることで住民サービスが向上する」と主張する。
確かに一見すると地域主権的な発想に見えるが、その本質は企業経営やマーケティングの論理に近い。橋下知事の競争至上主義、橋下ブレーンとして都構想の絵を描く上山信一・慶応大教授の考えが如実に反映された施策と言えそうだ。
特別区について平松市長は「上から市域を切り分けて、財源や大規模な事業、それに関わる権限は府に集めるというのは、地方分権でも何でもなく、府県集権主義にほかならない。枠組みを変えるから、あとは区長を選んで好きにやれという無責任極まりない構想だ」と反発している。
「大阪都構想の導入は困難」と行財政専門家
大阪都構想の導入を巡っては橋下府知事自身が昨年4月「新たな大都市制度を議論するため」と「大阪府自治制度研究 会」(座長=新川達郎・同志社大大学院教授)を設置したが、昨年末の最終会合で「大阪都構想の導入は困難」との見解で5人の委員が一致。府、大阪市による政策協議会を設置すべきと提案し、委員会からは「一時の熱狂に踊らされないよう」「ポピュリズムにならないよう」という意見が飛び出している。
自らが委嘱した行財政の専門家たちの提言に橋下知事は「府としては受け止めるが、維新としての政治活動は別」と研究会に抗議している。
「虚構・大阪都構想への実証的反論」の論文を著している高寄昇三・甲南大名誉教授は「特別区方式は、大阪市が一体として処理してきた公営企業と生活行政を分断し、細分化し、総合的生活行政システムを破壊する暴挙」との見解を表明している。
大阪府・大阪市以外の自治体の長や、国の反応はどうか。
井戸敏三兵庫県知事は、「二重行政の解消や、東京に対抗できる行政づくり」を理由に、本構想に理解を示している。
石原慎太郎東京都知事は、大阪都の名称について、「首都ではない」と難色を示したが、長男の石原伸晃自由民主党幹事長は「日本にとってプラス。関西発の都道府県、市町村のあり方の発信になる」と評価。また、都副知事の猪瀬直樹も、「府市二重行政の解消」を理由に賛同している。
一方、岡田克也民主党元代表は「何を言っているのかさっぱりわからない」と構想を批判。大阪都のモデルとなっている東京都の特別区の各区長へのアンケートでは大阪都構想への批判が相次いでいる。
大阪都(大阪市の廃止)をめぐる賛否の主張
| 論点 | 「大阪都」反対論 | 「大阪都」賛成論 |
| 本質 | ●府による大阪市の吸収合併、大阪市の廃止に他ならない ●大都市自治の破壊 |
●大阪府域の再編 ●大都市自治制度を実現する |
| 大阪市の自治 | ●府全体の視点も、大阪市の視点もともに重要 ●都構想は、大阪市の自治の伝統、地域集権を無視するもの ●大阪都は旧大阪市域に、特定開発以外は十分配慮しないおそれがある ●大阪市は自己決定権を失い、都の決定に依存する ●特別区に分解され、大阪の都市としてのまとまりが失われる ●現在も区ごとの議員選挙で区民の意向は代表されている ●特別区による住民自治のメリットを、大阪市の廃止によるデメリットが上回る |
●大阪全体の利益が優先。大阪市としての自治権、高次の政策権限は、大阪全体の利益の実現の妨げ ●大阪都は大阪市域に産業基盤のため投資を集中 ●大阪市域の基礎自治体の機能は特別区という形で存続 ●公選区長と議会を備え、住民により近くなる。多すぎる区の再編も可能 |
| 指定都市制度と東京都制の見解 | ●指定都市のような大都市自治体による制度は、海外でも一般的 ●都構想は、指定都市の理念を軽視。東京都は戦時中、集権化のためにつくられた例外 ●地方分権の時代のモデルには不適当 |
●指定都市の自治機能はなお不十分 ●大阪は競争相手の東京都をモデルに ●大阪都にして権限と財源を一元化すれば、アジアの主要都市との競争力が高まる |
| 大阪発展のための具体的な政策 | ●大型インフラとともに、きめ細かな都市整備、景観、文化なども都市の発展に重要 ●府市の「2馬力」と分担で、実績を挙げてきた ●大阪という都市に責任を持つ自治体がなくなるのはマイナス ●地下鉄の新線は、府市の適切な資金分担が前提。大阪都構想ではかえって政策が遅れる ●府市が協力・妥協して政策を進めるべき |
●大阪を危機から再生させるため、産業基盤の大型インフラ整備が最重要で、大阪都を一元的に担当 ●地下鉄新線を建設して関空への鉄道を高速化する ●市内高速道路「淀川左岸線延伸部」の建設 ●伊丹空港の廃止で関空への一元化。 |
| 府市の二重行政 | ●府と市で地域・分野を分担したり、合計して需要に対応しているものも多く、問題ない ●過剰な部分は、政策評価で整理縮小する |
●府と市の二重行政が多く、非効率 ●府と市が分かれたままだと整理・効率化に限界がある |
| 財政運営 | ●累積赤字は大阪市、大阪府ともに大きい ●府・市の税収不足分は地方交付税で国から補てんされている ●大阪市の機構や政策を特別区に分解するとかえって非効率になる |
●大阪市の財政は潤沢、府内に再配分すべき ●大阪府と大阪市は一体化すべき ●大阪市は福祉、人件費などが「高コスト体質」で自己改革がない ●区の数も多すぎる ●府と市の機構や政策の重複部分を効率化できる |
| 大阪都への権力の集中 | ●大阪都への一元化・集権化は危険と偏狭さがある ●府内の市が府に意見がいいにくい状況がさらに強まる ●権力のチェック、政策論争の可能性が弱まる |
●大阪発展のためには、1人の指揮官がリーダーシップを取るべき ●大阪都知事の権力は、議会や住民にチェックされる |
| 世論解釈 | ●府全体の賛成多数は大阪都を正当化しない ●大阪市内と府内で結果を分けて報道すべき ●大阪都の内容、功罪を説明した上で賛否を問うべき |
●府民の間では大阪都への賛成が多く、都構想は正当化される ●手続き的には大阪市などの長・議会選挙で勝利を目指す |
| 「本音」の憶測 | ●知事は、大阪市が長年築いてきた資産の一挙獲得を狙っている ●市役所跡地の売却・開発、それによる府財政の改善を狙っているではないか ●知事への権力集中も |
●大阪市長、市議会議員、市職員はその地位にとどまりたいがために、大阪都構想を反対しているのではないか |
※これまでの発言、発表、ホームぺージの掲載内容などを参考にまとめた
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