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2019/11/28

広島流 映画館の復活

第四章 広島人はなぜ、地元愛にこだわりすぎるのか
人を愛し、街を愛する力 ガラはよくないけど、心根はやさしい

岩中祥史「広島の力」(青志社)より

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 広島市随一の繁華街である紙屋町(かみやちょう)・八丁堀交差点の角に建つ福屋デパートの8階に、「八丁座」という名の映画館がある。かつて松竹系の映画館があったが、2008年4月末に閉館となり、それからしばらく間を置いた10年8月に入ってきた。それまで広島市内で「サロンシネマ」や「シネツイン」などを運営してきた「序破急(じょはきゅう)」という会社が経営母体で、館名の「八丁座」は公募で決めたという。

 同社社長の蔵本順子が「八丁座」のオープンを決めたのは、自分が生まれ育った広島の「街中に映画館の火をともしたい。それには、そこに住んでいる人が本気を出さなければ」という思いからだ。映画(館)はその火付け役であって、最終目標は広島の活性化にある。

 きょう日の映画館はほとんどがビルの中にあるから、往年の映画館のイメージはまったくない。入場券の買い方もまるっきり違っている。

 しかし、そうした前提をすべて受け入れたとしてもなお、この「八丁座」にはだれもが驚くことだろう。その驚きはエレベーターを降りた瞬間から始まる。私たちが慣れ親しんでいる「シネコン(シネマコンプレックス)」とはまるで違うからだ。といって、いわゆるミニシアターのような印象を与えるわけではない。

 ロビーには、京都東映撮影所大道具製作の松を描いた(ふすま)絵(2010年公開の『十三人の刺客』で使われたもの)が飾られている。東映から譲ってもらったのだという。また、入口にも同撮影所に特注して製作を依頼した53張の提灯が並ぶ。カフェもあり、コーヒー・ジュースなどのソフトドリンク、ワインなどアルコール類、アイスクリームやサンドイッチなどを提供している。

 入場扉がまた素晴らしい。こちらも同撮影所大道具の美術作品「もみじの四季」で、12枚が連なるもの。中に入ると、そこにはなんとも独特の、それでいて未来を予見させるような斬新な雰囲気の空間が広がっている。

 スクリーンは「(いち)」と「()」の二つ。館内は、東京・両国(りょうごく)にある国技館のマス席、秋田県小坂(こさか)町に残されている芝居小屋・康楽(こうらく)館(国の重要文化財)、あるいは愛知県の明治村に保存されている呉服屋(大阪・池田市に1868年に建てられた芝居小屋を移築したもの)、兵庫県豊岡市出石(いずし)永楽(えいらく)館(1901年に作られた劇場)を思わせるような、昔風の芝居小屋といった雰囲気である。当然、内装もことごとく和風で統一されている。

 いま風のシネコンとは真逆なのだが、といって、古めかしい感じはまったくない。「和モダン」とでもいうのだろうか、とてもおしゃれなのだ。地元のマルニ木工に特注したシートは幅80センチ・奥行85センチと、ゆったりしたサイズで、座席数は「壱」が170席、「弐」が70席。

 実は、このシートこそが八丁座の売りで、蔵本も、「お客様がいちばん体感するのがシートなので、長時間座っても痛くないシートをめざした」と語っている。通常の シートのほか、ハイカウンター席(「壱」は9席、「弐」は6席)や畳席(「壱」に7席)も備えている。

 ゆったりした設計になっているため、隣の席に座る人のことがまったく気にかからない。前後の間隔は、足を完全に伸ばしても届かないほど。飛行機でいうなら、ビジネスクラスの感じだろうか。各席に小さなテーブルが備えつけられており、飲み物や荷物が置けるようになっている。当然のことだが、座席の数はそれ以前の劇場に比べ半減したという。

 内装を担当したのは広島市出身の映画美術監督・部谷(へや)京子。部谷は1992年、周防(すおう)正行監督の『シコふんじゃった。』で美術監督としてデビュー、その後も同監督の『Shall we ダンス?』や『それでもボクはやってない』の美術を担当したベテランである。『それでも〜』では日本アカデミー賞最優秀美術賞を受賞している。


岩中祥史(いわなか よしふみ)
 1950年11月26日生まれ。愛知県立明和高校から東京大学文学部に進み、卒業後は出版社に勤務。1984年より出版プロデユーサーとして活動するとともに執筆活動も。地域の風土と人々の気質との関係をテーマに、『名古屋学』『博多学』『札幌学』『鹿児島学』『新 不思議の国の信州人』『新 出身県でわかる人の性格』『名古屋の品格』『城下町の人間学』など著書多数。2011年の上梓した『広島学』はご当地広島の人たちをも驚かせる内容で、ベストセラーになった。


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