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2019/6/13

「心のめばえ」を出版 

広島大学元学長 牟田泰三さん

ほのぼのエピソードと心理の分析
孫娘の『思いやる心』に感動

 広島大学の元学長・牟田泰三さん(82)が、孫娘とのほのぼのとしたエピソードに交え、子どもの心の働きについて分析し、つづったエッセー「心のめばえ」。本紙に9カ月間連載した人気エッセーが書籍となり、書店などで販売中。牟田さんをFM東広島に招き、物理学が専門だが心理に注目した理由などを、番組で聞いた。紙面でその一部を紹介。(聞き手/FM東広島パーソナリティー 間瀬忍)


プロフィル むた・たいぞう 1937年、福岡県生まれ。九州大学理学部卒業、東京大学大学院物理学専攻修了、理学博士。京都大学助手・助教授、広島大学教授・学長、福山大学学長などを歴任。主な著書に「語り継ぎたい湯川秀樹のことば」(丸善出版)、「電磁力学」(岩波書店)、「量子力学」(裳華房)などがある。東広島市在住。
 ―子どもの心に注目した理由は。

 私の専門の物理学は、自然界のあらゆることが説明できる。しかし、私自身、心を物理学で説明できるのか、という不安を長年抱いていた。そうした時、孫娘アヤの心のめばえ≠ニもいえる行動を見て、物理学という武器を捨て去って、自分の考えで孫娘の考えていることの分析に取り組もうと思った。究極的には物理で説明できるのかもしれないし、そうでないかもしれない。大変面白い問題。

 ―一つ一つの話は、アヤちゃんとのエピソードと、牟田さんの分析で構成されていますね。

 アヤの心の働きに気付いた時にメモを取っていて、エピソードはそれに基づいて書いてある。さらにその心の動きを、たぶんこういうことではないか、と考察している。例えば、『小さなカニさん』では、たくさん捕まえたカニを放してやるか、放してやらないか、そういう判断を幼いながらにやっている。自分の心とカニの心を同じように考えて、アヤはカニを思いやっていると、私は分析した。その思いやりの心に気付いた時、非常に感動した。

 ―祖父と孫のほのぼのとした日常に目が行きがちだが、心理の分析こそが読者に伝えたいこと。

 まさにそう。おじいちゃんやおばあちゃんが、かわいい孫についてつづった本はたくさんある。ただ、それとは違った目線で見ていることを読者の皆さんに理解していただきたい。


▲「心のめばえ」の最初の章。普段本を読まない人やシニア世代にも読みやすいようにと、大きな文字にし、挿し絵をふんだんに入れて構成した
 ―心について、どう学びましたか。

 福山大学学長で心理学者の松田文子先生と話しているときに、発達心理学の中に「心の理論」という分野があることを聞いた。それは、他の人も自分と同じようにいろいろ考えていると推測する心の働きのこと。それが孫娘の成長を分析する上での重要なキーワードとなり、論文も読んだ。ある意味、この本は私の勉強の軌跡ともいえる。


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