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2019/1/31

ジイジ・バアバ、パパ・ママへ贈る

心のめばえ アヤと過ごすジイジの日記 <25>

著者/牟田 泰三
挿絵/橋本 礼子

4歳9カ月 性格の形成

 正直言って、アヤはあまり運動神経があるとは言いがたい。その原因はきっと怖がりのせいだろう。遊園地の遊具でも、まだ乗ったことのないものはまず敬遠してしまう。運動だけではない。食べ物もそうだ。これまでに食べたことがない新しい食べ物は食べようとしない。

 ところが、うまく言いくるめて興味を持たせ、一度うまくいくと、急に興味が湧いて、今度は止めどなく繰り返すことになる。こうなると、幼児のことだから、自分が疲れていることも気がつかずやりまくることになる。

 自宅からそう遠くないところに道の駅「湖畔の里 福富」があって、そこに「ふれあい広場」という遊園地が併設されている。この遊園地にはとても長くて高いコロコロ滑り台(ローラー滑り台)がある。アヤが3歳の頃は一人で滑らせるのは危ないので、パパやジイジがだっこして滑っていた。普通の滑り台に比べてコロコロ滑り台はおしりの下でローラーが回るので、スピードが出ないから安全といえば安全であるが、体重の重い大人にとってはおしりがむずがゆくて仕方がない。

 4歳を過ぎてやっと一人で滑ってくれるようになったのでヤレヤレである。この滑り台は長さもかなり長いが、高さも家でいえば3階ぐらいはあって、スタート地点まで登るのも大変だし、人気がある滑り台だから順番待ちの行列に並ぶ必要もある。

 これにアヤがはまってしまった。ただ漫然と滑ってくるだけなら、2〜3回ですぐ飽きるはずである。何度も何度も繰り返すということは、毎回滑り方を変えてみたり、前にうまくいかなかったところを改善してみたり、もっと早く滑る方法を工夫してみたりするから、何時までも飽きずに続けるのであろう。

 一度やみつきになったらもう止まらないというこの独特の性格はアヤの個性なのだろうか。他の幼児と比較したことはないので、この個性が平均的性格とずれているのかどうかは分からない。パパに言わせると、アヤのこの熱中する性格は熱中症だという。でも、これだと暑さにやられる熱中症と混同されそうだ。この性格は異常なのではないかという心配も少しあるが、いやいや研究者なんか皆そうなのだから、心配することはない。むしろ、大切にしてやるべきなのかも知れない。

 子供の性格は遺伝によって決まるのだろうか。よく「この子は親に似て短気だねえ」などと言うことがある。両親がこれこれの性格だからその子供もこうなると言えるのだろうか。性格そのものが遺伝によって決まっているのだろうか。

 私にはどうもそうではないように思える。幼児期に体験するまわりの環境が性格の形成に大きな影響力を持っているのではないだろうか。例えば、アヤがとても虫を怖がるのは、ママが蜂やアブのような危険な虫を怖がって逃げるので、自然に虫は怖いという感覚が植え付けられるのであろう。また、友達とは誰とでも仲良く遊び、けんかもしないというのは、きっと、幼稚園の先生方が「いじめ」や「のけ者」などが起こらないようにとても注意していてくださるお陰ではなかろうか。

 もしも子供の性格形成が遺伝のみによるものではないのであれば、幼児期にできるだけ良い環境を整えてやることが極めて重要だと思われる。


プロフィル むた・たいぞう

 1937年、福岡県生まれ。九州大学理学部卒業、東京大学大学院物理学専攻修了、理学博士。京都大学助手・助教授、広島大学教授・学長、福山大学学長などを歴任。主な著書に「語り継ぎたい湯川秀樹のことば」(丸善出版)、「電磁力学」(岩波書店)、「量子力学」(裳華房)などがある。東広島市在住。

連載中の「心のめばえ」シリーズは、牟田のホームページでも読むことができます。https://home.hiroshima-u.ac.jp/mutata/


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