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2018/9/13

ジイジ・バアバ、パパ・ママへ贈る

心のめばえ アヤと過ごすジイジの日記 <8>

著者/牟田 泰三
挿絵/橋本 礼子

3歳1カ月 階段でだっこ

 公園で遊び疲れて帰ってくる途中に長い登りの石段がある。普段なら、こんな時はパパに「だっこー。」とせがんで、だっこしてもらって階段の上まで連れて行ってもらうのが常である。でも、
「ジイジは腰が痛いからだっこは駄目だよ」
とパパやママから言い聞かされている。そこで、お利口さんして、ジイジと手をつないで
「よいしょ、よいしょ」
と石段を登り始めた。
ジイジ「アヤは元気だね。」
アヤ 「・・・・・」
一心不乱に歩いている。あと十数段ぐらいまで来たとき
アヤ 「草があるからいやだ。草から虫がでる。」
と言って動かなくなった。
ジイジ「もう少しだから頑張ろうよ。」
と言ってもびくとも動こうとしない。そうするうちに泣き出してしまった。仕方がないから
ジイジ「ジイジがだっこしようか。」
と言うとぴたりと泣き止んだ。ジイジは、おもちゃの入った網袋とお菓子やシャツの入ったバッグを左手に提げながら、右手でアヤをだっこして階段の上の道路までやっとたどり着いたら、アヤはもうご機嫌になっている。

 いつも両親から「ジイジは腰が痛いからだっこは駄目だよ」と言われているからここは頑張るしかない、と子供ながらに耐えていたけど、もう少しのところでくたびれて、本当はジイジにだっこしてもらいたかったんだ。ちょうど草が見えたから、それを言い訳にジイジにだっこしてもらいたかったけど、ジイジは分かってくれない、それでとうとう泣き出す作戦に出た。本当は
「ジイジだっこ。」
と言いたかったのだ。

 これは大人の分析で、アヤのような幼児が最初からそんな計略を立てているとは思えない。瞬時瞬時の感覚に従って行動しているだけだろう。しかしそれらがつながると計略に見えてくる。

 ジイジと手をつないで道路を歩き出すとすっかりご機嫌で、近所のおばちゃんに出会い、
「あら、いいわね、お爺ちゃんとお散歩なの。」
と言われて愛きょうを振りまいている。

ジイジの気付き 時には甘えにもこたえてあげよう。


プロフィル むた・たいぞう

 1937年、福岡県生まれ。九州大学理学部卒業、東京大学大学院物理学専攻修了、理学博士。京都大学助手・助教授、広島大学教授・学長、福山大学学長などを歴任。主な著書に「語り継ぎたい湯川秀樹のことば」(丸善出版)、「電磁力学」(岩波書店)、「量子力学」(裳華房)などがある。東広島市在住。

連載中の「心のめばえ」シリーズは、牟田のホームページでも読むことができます。https://home.hiroshima-u.ac.jp/mutata/


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