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2018/7/5

高校野球と教育 呉高監督 中村信彦さんに聞く

目的は人間形成、目標は甲子園

 高校野球は単なるスポーツではなく、人間教育の場でもある。県内の高校で硬式野球部監督として指揮を執り、甲子園に導いた経験を持つ呉高の中村信彦監督(東広島市黒瀬町)に、高校野球のあり方や監督論などについて聞いた。全国高校野球選手権大会は今夏、第100回目の節目を迎える。

なかむら のぶひこ 1954年東広島市黒瀬町生まれ。尾道商高、日体大卒。選手時代は外野手として活躍。78年、母校の尾道商高に監督として就任。甲子園には、センバツに81年、82年、86年の3度導く。その後、98年から賀茂高の監督を8年間務め、07年から呉高の監督に。賀茂高では、2度ほど秋の中国大会に導き、センバツにあと一歩まで迫った。昨年、呉高を創部10年目でセンバツ初出場に導いた。63歳。

気持ちが逃げたら負ける。だから叱る

 ―指導の根底にあるものは。

 部活の目的は人間形成であり、生徒には、一生懸命、野球に取り組むよう説いている。ただ、そのためには、甲子園出場という目標を持たせることが大切。負けてもいいと思ってやっていたら何も得られない。勝とうと懸命に努力することが、自立心や耐える力などを磨くことになり、教育につながると信じている。

 ―昨春は、野球部発足の2007年から指導する呉高を選抜初出場に導きました。

 ゼロからのスタートだったが、高校野球はトーナメントの一発勝負なので、いつかチャンスはあると思っていた。どんなに弱い学校でも真面目に野球に取り組めば、名門校と互角の勝負ができることを、生徒には耳にたこができるほど言ってきた。努力すれば報われ る。その証明ができてうれしかった。

 ―中村監督といえば、試合中でも練習中でも厳しく叱る、ど迫力の熱血指導が代名詞です。

▲昨春の選抜高校野球で采配を振るう中村監督(阪神甲子園球場で)

 グラウンドは戦場だと思っている。常に気持ちを張り詰めた状態にしておかないと、生きる(勝つ)こ とはできない。野球では、気持ちが逃げ腰になると、必ずミスが出る。ミスを犯すと、絶対に強いチームには勝てない。叱るのは、生徒が逃げ腰になることを防ぐためと、もう一つ、僕自身を鼓舞するためだ。采配を振るうとき、自分でも弱気の虫が出るときがある。 采配の迷いは、往々にして負けにつながるからだ。

 ―選手は委縮しませんか。

 的を射ているかどうかは分からないが、叱るときは明るく叱り、叱った後の、フォローを欠かさないよう心掛けている。じめじめした叱り方は、生徒のやる気をそぐからだ。生徒には「僕に叱られて委縮するようでは、社会では通用しないぞ」とも言っている。僕の意図をくみ取ってくれているのか、委縮するような生徒はほとんどいない。

 ―賀茂高では、秋の中国大会に2度導き、甲子園出場まであと一歩まで迫りました。

 選手の頑張りに尽きる。 進学校の賀茂高では気弱な生徒が多くて、県外の強豪と練習試合をするだけで、気持ちが逃げていた。これではいけないと思い、厳しい練習を課して精神的な部分も鍛えた。前任の尾道商高のときは、素質のある子が集まり、できるがゆえに厳しい練習から逃げたがっていたが、賀茂高の生徒は、「上手くなるのなら」と鍛えてもらうことに、むしろ充実感を覚えていた。野球名門校ではない野球部の生徒を伸ばすための極意を知った。今の指導スタイルになったのは賀茂高からで、呉高でも踏襲している。

 ―自身にとって高校野球とは。

 人生そのものでしょう。いや、野球を通して子どもの成長を見ることができる監督は、人生を懸けてやるに値する仕事だと思っている。


高校野球広島大会初戦の組み合わせ(関係分)

▽賀茂北―三原東(8日)
▽城北―武田(9日)
▽賀茂―向原(9日)
▽(明王台―神辺の勝者)―西条農(11日)
▽(国際学院―忠海の勝者)―黒瀬(12日)


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