子育てと仕事の両立 鍵はイクボス 

イクメンになりたいのになれない… 

 「子育ても仕事も大切にしたい」という男性が増えている。積極的に育児に関わる男性を指す「イクメン」という言葉は定着したものの、依然、「育児休業などの制度を利用しにくい」といった声が多い。そんな職場の雰囲気を変える鍵は、部下のワーク・ライフ・バランス(仕事と生活の両立)を考え応援する上司「イクボス」が握っている。(橋本礼子)

上司が実践、社内広報で制度の利用推進
育児相談など支援多様化

 イクボスは、自らも仕事と私生活を楽しみ、部下が仕事と生活を両立できる環境づくりを進める経営者・管理職のこと。育児休業(育休)取得や時短勤務を推進する中で、仕事の効率アップ、業務の共有化が行われ、結果的に会社全体の業績向上につながるという。

 広島県は昨年12月、誰もが働きやすい職場づくりを加速させようと「イクボス同盟ひろしま」を発足させた。現在、県内の企業の113人が参加。このうち12人が東広島市。年数回の例会で、育休取得の推進の取り組みや悩みなどを共有し、改善策を探り、ヒントとして各社に持ち帰る。湯崎英彦県知事や県内13商工会議所の会頭が「イクボス宣言」をするなど、盛り上がりをみせている。

 一方で、「同僚へのしわ寄せが心配」「職場が育休を取得しづらい雰囲気だ」などといった不安が現場にあるのが現状で、育休取得をためらう男性が多い。イクボスたちは、この不安を払しょくしようと知恵を絞る。

GUTS[自動車部品設計]
従業員数:10人

 同市西条昭和町の自動車部品設計会社GUTSの田浩社長(48)も同盟に参加。自身も7児の父親で、3回の育休を取得した。同社の社員は10人でこのうち9人が男性。育休制度のほか、子どもの看護が必要な時の在宅勤務制度、毎週水曜日と19日を定時退社にするなどさまざまな支援策を設ける。


▲月に1回のミーティングで、家族の近況を報告するGUTSの社員(左から4人目が田尻社長)

 月1回の全体ミーティングは、子ども連れでもよいことにしている。家族の話題コーナーを設け、近況を報告する。「互いの家族の顔や現状が分かっていると、何かあった時に『支えたい』という気持ちが強くなり、それがチームワークの高まりにつながっていると感じる」と田社長。

 また、月に数回設けている「イクメンタイム」には、田社長自ら幼稚園に子どもを迎えに行く。社員は「上司の実践を見ると、私たちも利用しやすい」と言う。

 同市西条西本町の精米機器製造のサタケでは、これまでに30人の男性社員が育休を取得。「育休いつとるの?今でしょ!!」など印象に残るように工夫を凝らしたポスターを作成し、社内の目に付きやすい場所に掲示し、取得を促してい る。

 「前例があるため、気軽に取得できたという声が多い」と担当者。同社が男性の育児参加の促進に力を入れ始めて12年目。「男性の育休は当たり前であり、自然の流れとなっている。取得者の業務を上司や同僚がサポートする態勢もできている」と話す。

 県は「イクメンが多い会社は女性にとっても働きやすい。誰もが仕事と生活が充実する職場環境づくりを推進していく」としている。平成27年度の県内の男性の育休取得率は5・1%。32年には13%とする目標を掲げる。イクボスの活躍に期待がかかる。


東広島市のイクボス同盟参加企業の取り組み

サタケ[精米機器製造]
従業員数:1000人

 男性の育児休暇の取得推進▽毎日がノー残業デー&時間外労働ゼロ▽社内保育室「バンブー」の設置▽イクじい・イクばあ休暇の新設▽子育てサロンの開設▽イクメンクラブの開設▽男性の育児休暇にストック有給休暇を使用…など


▲社内に掲示している育休に関するポスター
広島大学[教育・研究]
従業員数:3304人(6月1日現在)

 部署ごとにノー残業デーの設定▽学内保育施設の設置▽小学校の長期休業中(春・夏・冬)に学内で学童保育(広島大学子どもクラブ)を実施▽教職員の乳幼児が病後児保育施設を利用した際の利用料を一部補助…など

テラスプランニング[福祉事業コンサルタント]
従業員数:3人

 毎週水曜日はノー残業デー▽月に1回、社員と社員の家族も一緒の食事会。
 食事会を行うことで家族間のつながりを作り、仕事や育児の悩みを共有できる場としている

井野口病院[医療]
従業員数:約350人

 育児休業の取得推進▽病院敷地内に「井野口なかよし保育園」を設置▽育児や介護などのためフルタイム勤務が困難な職員を対象とした短時間正職員制度…など


▲院内保育園のスタッフと話す男性職員と子ども

男性の育児参加 私はこう思う

●子どもの面倒を一人で見るのは無理。しっかり働いて、仕事の合間にできる範囲で、妻のサポートをしている。(41歳・男性)

●例え育休が取りやすい職場でも、夫がしっかり赤ちゃんの世話をしないなら、育休は不要。妻の負担が増えるだけ。(39歳・女性)

●私たちのころは、男性が育休を取る時代ではなかったが、子どもの行事ごとに休ませてもらっていた。子育ての大変さを分かっているから、部下にも育児参加をすすめている。(56歳・男性)

●言葉では「育休取ってもいいよ」と言われるが、実際にはいやな顔。取得できる雰囲気ではないから諦めている。(32歳・男性)

●育休などで男性社員の育児参加を応援したい気持ちはあるが、現場は忙しく、考える余裕がない。(51歳・男性)

●男性でも子どもの用事のために早く帰る社員はいるが、育休の取得は聞いたことがない。子育てに対する理解がある職場だが、同僚に長期の育休を取るといわれたら、正直困る。(36歳・男性)

●育児には積極的にかかわりたい。育休こそ取ってはいないが、子どもの病気や急な送迎などは、休んだり早退したりさせてもらっている。同僚や上司の理解もあるため、「いい職場だな」と思う。(38歳・男性)

ザ・ウィークリー・プレスネット 2016/7/23

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