伝説の記者・コマさんが斬る 「賭博」と「声出し祝儀」

同じ尺度で解決されるべきでない


こまざわ・さとる 1942年、広島県生まれ。報知新聞入社後、半世紀にわたり野球記者一筋。主な著書に「昼も夜もカープ」(ベースボールマガジン社)ほか多数。現在、報知新聞社ボーイズリーグ担当、スポーツライター。

 賭博問題から「声出し」―ブスブスくすぶり続けてきた火種が、開幕を直前にして日本プロ野球界全体へ飛び火して一気に燃え広がった格好になっている。しかし、冷静に見ると、巨人の不始末に端を発した一連の騒動は、必ずしも同じ尺度でスンナリと解決されるべき問題ではない。(駒沢悟)

球界浄化 問題の区別明確に

 昨年の10月5日、巨人は福田聡志投手の「野球賭博」への関与を発表した。これは大問題で、巨人は笠原将生、松本竜也の2人を加えた計3投手を野球協約に基づいて日本野球機構(NPB)の熊崎勝彦コミッショナーに告発した。不正行為の発覚はこれだけで終わらなかった。余震が今年の春になってやってきた。3月8日、巨人は新たに高木京介投手の「野球賭博関与」を発表。ファンを裏切り続けた代償に、渡辺恒雄最高顧問、球団オーナー、球団社長らの引責辞任が決まった。

 暴力団など反社会勢力とのつながりが指摘される「野球賭博」は、決して許されるものではない。1970年の黒い霧事件≠焜Xター選手たちがプロ野球界から追放された。ただ今回は、その重罪を犯し た一投手が、当局の取り調べやマスコミ各社の取材に対し、チーム内で繰り広げられている「金のやり取り」まで暴露し、その問題がひとり歩きしてしまった。

突如浮上した声出し
かすんだ賭博問題

 失格処分を受けた本人にとっては、これもまたひとつの罪滅ぼしの意味があったのだろう。巨人の「声出し」が突然問題視されるようになった。試合前に野手たちは、仲間意識を高めるために円陣を組む。そして野手の一人が「さあ頑張ろう!」などと声を出して、互いを鼓舞し合う。その声係を務める選手へ祝儀≠ェ手渡されたという。この事実が余りにもクローズアップされ、先に起きた「野球賭博」の一件がついかすんでしまう結果を生み出してはいないか。

 巨人が勝てば「声出し」役は一人頭5千円ずつの現金がもらえ、負ければ逆に 千円ずつを支払う仕組みになっていた。この行為自体は野球協約の違反には当らず、NPBも「処分の対象にはならない」と明言した。ただ時期が余りにも悪過ぎた。「ファンの誤解を生む」との理由で、球界全体が金銭の授受を禁止する方向へどっと動いた。

 14日に巨人がその事実を認めると、翌日からの3日間でなんと6球団がそれに続き、「声出し」を通して選手が現金のやり取りをしていた球団は、半数を超す7球団まで膨れ上がった。中には、声を出す係が金を出し、それをプールしておいて、オフの懇親会に充てていたという球団まで。こうなると、どこが悪いのかよく分からない。

広岡達朗元監督
「コミッショナーしっかりして」

 この雪崩を打ったようなプロ野球界の動きに、最も戸惑っているのは選手たちではないか。球界を浄化≠キるのはいいが、時代にかかわらず絶対にやってはいけない行為と、時代が変わったから許されなくなった行為は区別する必要があ る。

 プロ野球の世界に「金銭授受」は付きものだった。最近まで。優勝のゴールが見えると褒賞金がベンチに積まれ、どのチームにも活躍した選手に次々と現金が配られた。自らのポケットマネーをヒーローに与える監督もいれば、球団が用意した「監督賞」もあった。

 西武、ヤクルトで指揮を執り優勝に導いた広岡達朗元監督(84)は「コミッショナーがもっとしっかりして、野球協約の細かい部分まで、選手たちが理解できるようにしなければならない。指導者も含めてこれを機会に勉強してほしい」と話す。またソフトバンクの王貞治球団会長(75)は声出しなどの行為があったことを認めた上で、選手たちをかばってこう言った。「ファンをだますためにやったことではない。金銭授受という言葉はきつい表現だから(マスコミ各社は)使わないでいただきたいものです」。

 プロ野球内部の「お金の問題」を「野球賭博」もろとも一気に排除するには無理がある。コミッショナー、球団は今後も選手会などと話し合い、各選手が理解するまで十分な時間をかけるべきだろう。

金銭に関するプロ野球界の主な不祥事

黒い霧事件(1969年〜)

 選手・関係者が金銭の授受を伴う八百長に関与したとされる一連の疑惑、事件。1969年から1971年にかけて相次いで発覚。関与が疑われた現役選手には永久出場停止(追放)、長期間の出場停止、年俸減額などの処分が下された。

プロ野球脱税事件(1997年)

 プロ野球選手やコーチが脱税に関与し、刑罰や出場停止処分が科された事件。多くの選手が、かつて所属した学校や社会人チームの監督などに、プロ入り時に受け取る契約金の中から多額の謝礼を支払う慣習の存在が明らかとなり、世間を騒然とさせた。

一場投手裏金事件(2004年)

 複数球団がドラフト自由枠での獲得を目指していた一場靖弘(明治大学硬式野球部)に対し、日本学生野球憲章に反して現金を渡していたことが発覚した事件。巨人・阪神・横浜のオーナー辞任へと発展。

西武裏金問題(2007年)

 西武スカウトの、アマチュア選手に対する裏金をめぐる騒動。アマチュアチームの監督にも選手入団の謝礼として現金が渡されていた事、現金供与は1978年から行われていたことが判明。

巨人現役投手、野球賭博疑惑(2015年〜)

 読売巨人軍の現役選手が野球賭博に関わっていたとされる騒動。3選手が巨人から契約解除された。2016年、オーナー、会長、最高顧問が引責辞任を表明。

ザ・ウィークリー・プレスネット 2016/3/26

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