広島大学で山中伸弥博士(ノーベル生理学・医学賞受賞者)が講演 「iPS細胞 医療応用へ」

研究者の信念と万能細胞との出合い語る


広島大学サタケメモリアルホールで講演する京都大学iPS細胞研究所所長・教授の山中伸弥博士

 広島大学は3月7日、同大サタケメモリアルホールで『広島大学から世界へ〜世界のトップ研究者に聞く〜』と題した講演会を開催。2012年にノーベル生理学・医学賞を共同で受賞した京都大学の山中伸弥博士とイギリスのジョン・ガードン博士を招いた。講演で山中博士は「iPS細胞がひらく新しい医学」をテーマに、再生医療の可能性などを語った。講演要旨を紹介する。

ES細胞との出合い

 山中博士は、元は整形外科医で患者の診療や簡単な手術を行っていた。肝硬変を患い、57歳で亡くなった父親に接し、「父に対して何もできなかった」という悔しさが臨床医から研究者になる一つのきっかけになった。そして、再び大学院に入り、渡米。グラッドストーン研究所時代に出合ったのがES細胞だった。

 「1981年にイギリスとアメリカの研究者が、ネズミの受精卵をお母さんネズミの子宮から取り出してES細胞と呼ばれる万能細 胞をつくりました。万能細胞は二つの性質を持っています。一つはほぼ無限に増やすことができる性質。もう一つは増やした後に刺激をしてあげると心臓や脳、肝臓のように体に存在する200種類以上の細胞を大量に創り出すことができる性質。私はこのES細胞に出合って万能細胞のとりこになり、それからずっと研究を続けています」

定まった長期目標

 97年、「日本でもES細胞の研究を続けよう」と意気揚々と帰国。しかし、アメリカではうまくいっていたことが、日本では同じようにやっても全くうまく いかなかった。科学雑誌に論文を出しても掲載されることはなく、実験用のネズ ミの世話に追われる毎日。研究意欲を失くし、ビジョンまで見失い、研究者を辞める一歩手前の状態に。整形外科医に戻ろうとまで考えていた矢先、奮起する二つの出来事が起こった。

一時は研究者を辞めようと…

 「一つは1998年にアメリカのジェームス・トムソン先生が人間のES細胞をつくったことです。人間のES細胞ができたことによって『再生医療』という方法で、患者さんに貢献する可能性がある。一例ですが、パーキンソン病、心疾患、脊髄損傷。これらの原因は全身に200種類ある細胞の中のたった1種類の細胞の機能不全で起こっています。ですから、その1 種類の細胞さえ人間のES細胞から大量に作り、移植してあげたら患者さんは治るのではないか。再生医療の切り札として一気に期待されるようになりました」

 そして、もう一つは99年12月、37歳で奈良先端科学技術大学院大学の研究室の研究リーダーになったことだ。

 「日本全国から優秀な学生さんが大学院生としてやってくる素晴らしい環境 です。研究者としてもう一度頑張ってみようと喜びに包まれ門をくぐりました。『ES細胞の課題を克服しよう』をビジョンとして掲げました。人間のES細胞は再生医療の可能性が絶大ですが、受精卵を使うという最大の課題が残されていました。受精卵を使わずに大人の患者自身の皮膚や血液で細胞を作れないかと考えたのです。受精卵は真っ白な状態で、そこに色んな情報が書き込まれて、皮膚や血液になると考えられています。リセットボタンを探し、押してあげれば受精卵の状態に戻って万能細胞ができるのでは、と考え、それを自分の長期目標にしました」

iPS細胞の可能性

 ヒトの皮膚や血液からES細胞を作ることには確かな根拠があった。ガードン氏が62年に行ったカエルを使った実験では、大人のカエルの細胞をリセットし、オタマジャクシまで作ることができることが示された。「リセットするのは決して夢物語ではない、きっとできるという信念のもとビジョンをつくりました」。研究室のメンバーと のハードワークのおかげで、6年で実現できたこと、そしてガードン氏とのノーベル賞共同受賞の喜びを語った。

 「2006年に四つの初期化因子を探してきました。四つの遺伝子をネズミの細胞に送り込むと、あら不思議、リセットされてES細胞と見た目も性質も区別がつかない細胞ができたのです。そして、由来が受精卵ではないのでiPS細胞(人工多能性幹細胞)と名づけました」

 iPS細胞の今後については再生医療≠ニ薬の開発≠フ二つの医療応用を目指しているという。

 「再生医療では間もなく患者さんへの臨床応用が始まります。その一例として、14年神戸理化学研究所の高橋政代リーダーにより、目の加齢黄斑変性という網膜の病気に対して、iPS細胞を使った臨床応用を行っています。臨床患者さんは一人ですが、経過は順調、間もなくたくさんの患者さんに治療が施されるでしょう。薬の開発に関しては、iPS細胞を使うと、あらかじめ患者さんによって効く薬を特定し、投与することができます。また、薬の開発速度が一気に速まっています」


ガードン博士「患者自身が治療を選べる社会に」

 英国ケンブリッジ大学ウェルカムトラスト英国癌研究基金ガードン研究所のジョン・ガードン博士。講演では、のちのES細胞やiPS細胞の開発に結びつくことになる、カエルの体細胞核移植によりクローン技術の開発に成功したことなど自身の研究を振り返り、「細胞置換療法には倫理や法律の壁があるが、どんな治療を受けるかは患者自身で決めることができる社会になるべきだ」と語った。


▲左から山中博士、広島大の越智光夫学長、ガードン博士

ザ・ウィークリー・プレスネット 2016/3/19

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