
日本語の文字は中国語の文字に由来しており、書道もまた中国の書法を源流とする。伝来後日本で創作された仮名書道や、現代のペン書道、或いはレタリング・イラスト・アートなどと呼ばれる表現手法はさておいて、一般には同一視されている現在の日本の漢字書道と中国書法の間にもいささかの相違点が生じている。
その一つは、書道に見られる字句がしばしば中国語風の日本語、或いは和製中国語で、時として解釈上の問題が生じることである。
また一つは、日本の書道の主流が、それぞれの流派の中で師の定める規範に忠実な臨書・倣書を基本とする集団的書風を重んじるのに対して、中国の書法では、個人に学ぶことを基礎とした上で作者一人一人の個性的書風を貴ぶことである。
更に言えば、日本の書道では精神的な「道」の一つとして、墨のすり方・筆のあげおろし・正座の姿勢などの所為作法や、押印・表装などの様式に至るまでが事細かに問われるのに比べて、中国書法のこのような形式にはほとんど頓着していない。
書法と書道のこのような相違はいずれを正とするかという問題ではなく、相違の存在を認識することでよしとするもので、他意はない。