豆知識

中国絵画の特徴(七)
南画と北画

 中国画を鑑賞するにあたってしばしば「南画・北画」という言葉を耳にする。多くは明代末期に董其昌が唱えた「南宗画・北宗画」の意味に用いられるが、別の意味で使われることも珍しくない。中国絵画の画風を南北に分類しているのは、歴史的に見て次の四つの場合である。

一、南北朝代(六世紀)の南朝画と北朝画
 南朝北朝では統治の勢力及び期間の上で南朝が北朝に勝り、また北朝では南朝ほど絵画が重視されなかったこともあって、主流は南朝画にあり、やがて南北両朝の画風は南朝画を中心に融合していた。

二、五代(十世紀)の華北と江南の山水画
 五代の頃の絵画活動の中心は華北地方(黄河下流地方)と江南(揚子江下流地方)で、自然環境の違いによりそれぞれ画風の異なった山水画が生まれた。華北の山水画には、荒寥とした原野を淡い墨色で描いたものや、峻険な山峰を力強い運筆で描いたものが多く、一方江南の山水画は温和な風景を清淡な筆致で描いたものが多くある。

三、北宋画と南宋画
 宋代前半、都が汴京にあった時代(北宋代)の山水画は、中央一線の構図で力感溢れる重厚な画風が主流であった。やがて宗室が臨安(現在の浙江省杭州市)に移ると、南方気候風土の影響を受けて、一辺一角の構図(辺角の景)で広大な空白を残した簡潔な表現の画風となった。この南北両宋の画風はそれぞれ後代の中国絵画に大きな影響を与えた。

四、北宗画と南宗画
 明末の大家董其昌は伝統的山水画の流派を南北二宗に分類した。以来この考え方は画論の基本として数百年にわたり普遍的に認められ、近来漸くその合理性を批判する声も出始めたが、その「南画」、「北画」の語は今なお多く用いられる。董其昌は二宗について次のように述べている。
 「絵画の流派は唐代に大きく二分した。北宗は李思訓を祖とし、青緑金色などを多用し輪郭線を描く着色山水画であり、一方南宗は王維を祖とし、水墨の渲染を多用して輪郭線に頼らず、気韻を尊ぶ主観的描写を特色とする。」
 南宗はとりもなおさず元代以降に隆盛を見た文人画そのものであり、董其昌自身が南宗は繁栄の一途をたどり北宗は衰退していった。北宗画は日本にも鎌倉時代に伝わり、室町時代に盛んになった。雪舟派、狩野派なども北宗に属する。

(林 淑恵)

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