豆知識

中国絵画の特徴(六)
中国絵画の装い-款・印・表装-

 西洋絵画でカンバスを豪華な黄金の額で飾るように、中国絵画でも独特の装いを凝らして作品を仕上げる。

◇款(かん)
 「款」には「条項」という意味があり、書画作品という款は書き添える題、讃、跋などの字句を指す(なお落款とは款を記入することをいう)。初期の中国では絵の完全性を損なわないよう画面には署名すらも書かれなかったが、中世以降は款が中国絵画の重要な構成要素となり、標題、内容に関連する詩句、制作に至る由来、制作の日付、署名などを作品の一部として画面上に書き込むようになった。
 画ははじめから款を書き入れることを念頭に置いて描かれ、そのために画面の一部を留白の空間とするなど、画と款の相乗効果による調和を考えなければならない。

◇印
 款と同様に、中世以前の作品では、後世に加えられた収蔵印・鑑賞印は別として、作者の氏名印すらほとんど見られないが、今では印は中国絵画には不可欠の要素の一つとなった。印は、鑑(印鑑、印の真偽を見分ける基準となる印影)と照合することにより作品にかかわった人物を特定する証拠として用いられたが、後、作品にいろどりを添え、構図を補い、また印の字句の意味によって作品の意境(前述)を象徴させるなどの効果が重視されるようになった。
 印字の内容は、繰り返し使用する汎用性や、字数が少ない、など印本来の特性による制限はあるが、ほぼ款と同様に氏名字号、書斎名、干支年、作品に関連する字句、作者の思想信条を標榜する字句、座右銘など多岐にわたり、印章の大きさ、形状、意匠、画面上の配置なども含めて画との調和が要求される。
 作品の所有者を示す収蔵印や、権力者が鑑賞したことを誇示する鑑賞印など、作品を権威づけるために無数の大印を画面上所嫌わず押した由緒ある作品を見かける。作品本来の価値を破壊しかねないこの種の押印に対して最近漸く自粛の動きが高まりつつある。

◇表装
 一般に中国画は薄い宣紙や絹本に描かれる。作品を保護し保存するため、また運搬・展示・鑑賞するため、更には装飾のため、裏打ちなど補強した上で、用途に応じて条幅(掛け軸)、横披(横軸)、巻軸(巻子)、冊子、匾(額…立匾・横匾)、屏風、衝立などの形態に表装する。

 このような仕上げの装いについて、日本画や日本書道では、例えば款や印の配置、印の種類や形状、条幅の細部仕様などから、はては押印の所為・作法、条幅の取り扱い手順に至るまで、それぞれの流派で相当厳格な規格仕様が問われることがある。この点中国の場合にはさほど厳しい掟はないが、さりとて作品の仕上げの装いをないがしろにするものでは決してない。
 近来、印の篆刻(篆字彫刻)や表装自体を独立した芸術と位置づける動きがあるが、実体から見て、これらは芸術というよりもむしろ技芸・工芸の範疇に入れるべきであろう。

(林 淑恵)

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