豆知識

中国絵画の特徴(四)
光と色

◇影のない絵

 原則的に中国絵画には影がない。私たちが普通目にする光景は、特定の光源自体が発する光線、またはそれが被写体にあたって反射された光線で構成されており、当然、光源の位置によって明度(明るさ・光の強さ)も変われば、光源の色相(色あい)に応じて反射光の色相も異なる。ところが中国絵画では特定の光源が想定されていない。強いて言えば、あらゆる方向から万遍なく自然光(特定の色に偏らない白い光)で照射された状態を想定した光景が描かれる。その結果画中の物体は影をともなわず、奥まった部分にすら翳りもない。例えば、夜景は昼間と同様に描かれ、月や燈籠を配置することで夜を暗示する。

◇色彩画

 光源の存在を無視するため、被写体は常にその類別に応じた固有の色相で着色される(随類賦彩)。例えば夏の山はあくまで滴る如き蒼翠(あおみどり)で、天気にも左右されなければ昼夜の別もない。むしろ山の色相から季節が特定されるほどに色相の概念が固定されている。

◇水墨画

 被写体の色相概念が固定されたことから、形で被写体が識別できれば強いて着色しなくても色が心に浮かび、「墨は五色を備える」(唐・張彦遠)として、唐代以降水墨画が台頭し、今や中国絵画の特徴の一つとなっている。
 墨は顔料の中でも特に褪色が少なく、紙や絹を腐蝕から防ぎ、水濡れにも溶けないため長期の保存が可能で、また最大の明度範囲(濃淡の差)を有するため、豊かで微妙な表現が要求される線描に最もよく適合することも、水墨画が重視される理由の一つである。

(林 淑恵)

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