
◇用具(何を使って描くか)
中国画の最も基本的な用具は、筆、墨または顔料(絵の具)、画宣紙または絹本(帛)であり、これらは一般的に書道と共通する。ちなみに、いわゆる顔料とは水や油に溶けない鉱物質または有機質の着色剤でこれを水及び膠(にかわ)と混ぜて使用する。また画宣紙(宣紙・画仙紙・画牋紙)はもともと中国安徽省宣城県から産出する紙と指す。
◇画題(何を描くか)
人物・山水・花鳥の三つが中国画の代表的画題である。歴史的に見れば、古くは殷代の青銅器に見られる規則的紋様に始まり、春秋時代(紀元前五世紀頃)の青銅器には自然界の景物・生物や神話動物が登場し、漢代(紀元初世紀頃)には人物画が主流であった。山水画は三世紀初め頃に出現し、これは西洋で風景画が出現するよりずっと以前である。隋代(六世紀末)に黄金時代を迎えた人物画はやがて衰退し、唐代に入ると(七世紀)主流は山水画に移った。同じ頃花鳥画も主要画題となり、宋代以後題材は急激に多様化した。
◇線の芸術(どのように描くか)
原則的に、中国画は線で構成される画、つまり線描である。これは中国画の重要な特徴の一つで、よく西洋画の面描と対比されるところである。この原則は古く南北朝時代にはすでに確立されており、南斉(紀元五百年頃)の謝赫が提唱した画論「謝赫の六法」の中にも「骨法用筆」という言葉で明記されている。
中国画の味わいの一つは、画面を構成するさまざまな線が、各々の太さ・長短・濃淡・曲線・かすれなどで醸し出す微妙な気配の表現にあり、それは文字による表現芸術の書と軌を一にするところである。そのため、中国画では古来「用筆」・「用墨」の技法が評価の基本的な軸の一つとして重視されてきた。
◇用筆(筆の使い方)
筆の使い方については記録文献の中に多様な論議・分類が見られる。一つは紙面に対する筆の角度と移動に関する点で、一般的には次のような分類がなされている。
臥筆 筆の穂を倒して描く、擦染(塗り染め)など。
拖筆 筆のふくらみ部分を紙に押しつけて引く、「拖」とは引きずる意。
破筆 穂先を散らし、つける墨を少なくする、かすれ。
顫筆 手をふるわせ線の太さを変化する。
順筆 最も一般的な用法で、筆を傾けた方向に走らせる。穂先は常に後に従い秀麗な線が生まれる。
逆筆 順筆の逆方向に筆を押して描く。穂先が割れ、険しさが表現される。
別の分類は筆に加える力と速度に関することで、次のような視点で論じられる。
擒縦 筆を持つ力を強めたり緩めたりする。
力度 筆を紙に押しつける力の度合。
速度
頓挫 急に筆の勢いを抜く。
廻旋 筆を回転させたり、左右への力の加え方を変化させる。
伸縮 一本の線の中で筆の速度を変える。
転換 一本の線の中で筆の力度・方向などを急激に変化させる。
起止 書き始めと止め。
行留 途中で一瞬筆を休ませる。
◇用墨(墨の使い方)
用筆とは別の視点から、墨の特殊な使い方を分類している。
溌墨法 大量の墨を注ぎ自在に筆を走らせる。
破墨法 渾然とした画面にアクセントの焦墨(濃い墨)を重ねる。
積墨法 墨色を淡から濃へ徐々に深める。
◇特殊技法
さまざまな用筆・用墨による線描の技法は更に細分化されている。例えば、明代の汪珂玉は衣服描法を十八種に分類しており、また山水画の皴法(山・岩石の地肌の描写法)でも数十通りもの描法があるとされている。また、定規を当てて描く界画描法(建築物など直線の構造物の描き方)や、縁どりをしないで直接染める没骨法、重彩(重ね塗り)なども屡々見られる技法である。そのほか特殊な技法として次のような例を挙げることができる。
散墨(溌墨) 墨をまき散らし、掃いたり払ったりして偶然できる形状・濃淡を利用する。
弾灑 墨や絵の具を口に含み吹き散らしたり、また色粉をまき散らす。
堆金立粉 画面に凹凸を作り立体的に表現する。
托本 押しつけて型どった紋様を利用する。
漆画 漆を重ね塗って特殊な光線をあてた時だけ浮き上がらせる。
水画 水面に絵の具を浮かべて紙に吸いとる。
火画 火のついた線香で紙を刺す。
洗絹 描かれた絹を水洗し磨きこんで淡くなる。
指頭画 筆の代わりに指で描く。竹や砂糖黍の繊維を利用することもある。
◇書画同源
書の文字(漢字)はもともと象形絵画であり、書と画は用具が共通であるばかりでなく、用筆・用墨についても基本的には同じである。書法に言う「永字八法」は画法にも適用され、唐の張彦遠に至っては「書画は同体異名である」とさえ断定している。
(永字八法)